大作戦! 週刊ヒロポン 「ヒロポンのインターネット大作戦」は
松元ヒロ・公認サイトです。
著作権に関する注意事項
C O N T E N T S

weekly HIROPON
週刊ヒロポン


その38 上品
その37 台詞5文字
その36 投稿
その35 ジャパンブルー
その34 メディアと正義
その33 韓国人と日本人
その32 犬のクッキー
その31 「君が代」よりは
その30 マルセ太郎さん
その29 私はクローン人
その28 飛行機
その27
その26 笑う日本人
その25 北京
その24 考え方ひとつ
その23 車窓
その22 自公・相田みつを路線
その21 再び骨が折れる
その20
安全は危険
その19
解散
その18
祝ってたまるか
その17
忙しい
その16
ドラマ
その15
その14
その13
その12
その11
その10
お金
その8
骨が折れる
その7
涙腺
その6
お金持ちの為の教育
その5
読書
その4
等身大
その3
誤爆
その2
天才
その1
タバコ


BBS
・作戦会議室・


週刊ヒロポン・その30

Subject: マルセ太郎さん
Date: Mon, 12 Feb 2001 23:25:15 +0900



マルセ太郎さんが逝ってしまった。
私の目標だったマルセさん。

死去の知らせの翌日、岡山の病院からご家族と共に戻ってくるマルセさんを
狛江の御自宅前で待った。マルセカンパニーの役者さん達と一緒に。

冷たい雨が降っていた。
ご家族から「家に入って待っているように」との指示だったが
鍵が無かった。
ピッキングの技術を持っている者もいなかった。

ようやく帰ってきたマルセさんは、舞台に立つ時と同じ顔をしていた。
だから死んだ事が実感できなかった。

マルセさんに可愛がられていた役者、永井寛考さんと、僕と、
そして葬儀屋さんとで、舞台衣装の作務衣を着せてあげた。
奥様の希望だった。
尊敬するマルセさんに、憧れの目で見ていたあの作務衣を着せてあげられる。
こんな光栄なことがあるだろうか。私の身体は感動で打ち震えた。
あの東京の中心の広大な土地に住む人から「ナントカ賞」を貰うより、
その数万倍もの栄光だった。

しかし、こんな型破りな心のこもった通夜も初めてだった。
故人の遺志が「無宗教で、内々だけで、線香臭いのはイヤ」だから。
奥様が「マルセが好きだった煙草でも吸ってあげて」と言うから、
皆手を合わせた後、煙草をプカ〜ッとふかすのだ。

一番困ったのは葬儀屋さんだ。
「祭壇はおいくら位のを?」
「いらない」
「あのう、お花は?」
「いらない、で見積もりは?」
「事務所に帰って相談してきます」と、帰っていった。

その頃には皆酒もまわり、賑やかに。
泣いては笑い、呑んで再び笑っては笑い。
宗教的儀式や演技で泣いたりする必要はないのだ。
「内々で」と言ってあるから、義理や宣伝の為に来る芸能人や芸能社や
マスコミもいない。それなのに断っても届く花々。駆けつける人々。

みんなマルセさんの芸を人間性を、尊敬し愛した人達だ。
集まった人達で奥様の作ったキムチをつまみながら酒を呑む。
みんな家族みたいだ。
儀式や序列も何もない。
肩書きを外した人間と人間が一人の芸人のもとに駆けつけたのだ。

娘さんの梨花ちゃんがマルセさんの枕元にあったアンケート用紙の束を見せてくれた。
最後までアンケートへの礼状を書いていたのだそうだ。
書いた人にはチェックがしてあった。
そして、真ん中くらいまでめくった所から、ぴたりとチェックが止まっていた。

マルセさんが死んだ。

松元ヒロ



<< >>

ヒロポンの会 ● since 1999.01

>> mail to webmaster